AI・IoT

 情報系分野の発明の実務には、独特の問題点があります。
 特に、IoT(Internet of Things)の発明が属するネットワーク型システムの発明や、ますます急速に発展しているAI(Artificial Intelligence)の発明には、次のような問題点があり、それを踏まえた実務が必要です。


 

ネットワーク型システム発明

複数主体問題、域外適用問題

 ネットワーク型システムは、IoT(Internet of Things)やクラウドシステムのような、複数のコンピュータ等を通信回線で繋いだシステムです。ネットワーク型システム発明には、複数主体問題、域外適用問題、「業として」問題があります。

 ネットワーク型システム発明が複数の者(事業者、エンドユーザ)に分散して実施されたり、複数の者それぞれの所有物によって構成されたりする場合に、特許権を行使することができるか否かが近年、争点になっています。これが、複数主体問題です。

 ネットワーク型システム発明の少なくとも一部の行為が日本国外におけるものであり、または少なくとも一部の構成が日本国外に存在する場合に、特許権を行使することができるか否かも近年、争点になっています。これが、域外適用問題です。



上記の問題点およびその対応策ならびに案件ごとの事情を踏まえた実務

 ネットワーク型システム発明の技術そのものは、ある程度コンピュータに詳しい人であれば、そんなに難しくありません。しかし、行使しやすい特許権を取得するには、上記の問題点および対応策をしっかり理解した上で、かつ、案件ごとの事情に鑑みながら権利化の実務を進める必要があります。




AI(Artificial Intelligence)関連発明

コンピュータ・ソフトウェア関連発明と同様の問題点

 「AI」と言えば、一般に、人間と同等の知的能力を発揮するアンドロイド(人造人間)のようにイメージされることがあります。しかし、実際はソフトウェアでコンピュータを制御することによって実現されるものです。

 したがって、AI関連発明は、基本的に従来のコンピュータ・ソフトウェア関連発明と同じです。すなわち、特許法2条1項に規定される発明に該当すること、特に「自然法則」を利用していることが、権利化への第一のハードルです。

 そのためには、特定の課題を解決するためにどのようにハードウェアを制御したのか、または、どのように情報処理を行ったのかを明確にする必要があります。

 また、学習または推論が国外で実施される可能性があるので、さらに上記の域外適用問題を意識する必要があります。

 

ネットワーク型システム発明の特有の問題点に留意する

 AI関連発明は、複数のコンピュータ等を通信回線で繋いだシステム(ネットワーク型システム)において実現されることがあります。ネットワーク型システムの発明には、上述のように、複数主体問題、域外適用問題、「業として」問題があります。
 したがって、AI関連発明の権利化に際して、これらの問題点に留意する必要があります。

 

AI分野の特有の課題に着目する

 AI分野には、特有の課題があります。特有の課題を意識しながら発明の課題を把握し、その解決手段を抽出することが、価値のある特許権の取得の第一歩です。

AI分野の特有の主な課題

・学習データの数が足りない
・学習に時間が掛かりすぎる
・推論の精度が低い
・推論に時間が掛かりすぎる
・AIを使って○○の業務を効率化したい
・AIを使って○○を生成したい